SAVE JAPAN プロジェクト 2024-2025

レポート

しめっちカフェ 湿地の生物多様性と希少種

2025年02月08日(土)実施
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レポート

湿地が育むいのちの多様性と、その保全の重要性について

今回のイベントでは、湿地という独特な環境を通じて、生物多様性や遺伝的多様性、そしてそれらを守ることの意義について、多角的な視点から学びを深めました。

まず、湿地とは単に「水辺の環境」だけでなく、淡水・海水を含む広義なものであり、そこに生きる生物の数は非常に多く、サンゴなども含めるとその多様性は計り知れません。こうした環境には「スーパーグループ」と呼ばれる、極めて多様な属性を持つ生物群も存在し、固有種も多く、湿地ごとに個性的でユニークな生態系が発達しています。

特に印象的だったのは、「遺伝子と種の多様性」という観点です。人間たちはしばしば「種」という枠組みで生物を分類しがちですが、その内側、つまりDNAの違いという視点で見ると、同じ種であっても個体間には大きな違いがあります。この多様性こそが、生物が環境の変化や病気などのリスクに適応して生き残るための鍵であり、「リスク分散」の機能を果たしています。

例えば、北海道内ではタンチョウは現在2系統ほどしか残っておらず、シマフクロウも4~5種類と限られた遺伝的多様性しか持っていません。これらの種が鳥インフルエンザなどの疫病に襲われた場合、同じようなDNAを持つ個体が一斉に影響を受け、壊滅的な打撃を受けかねないという脆弱性が指摘されました。

また、サハリンの湿地や長沼の人工遊水地におけるタンチョウの繁殖事例など、実際の保全活動の事例紹介もありました。特に「種」だけを守るのではなく、「その種が生きる環境」ごと保全することの重要性が強調されました。湿地は、泥炭のように植物が未分解のまま堆積する特異な土地でもあり、生態系のバランスを保つ役割も担っています。

最後に、生物多様性は単なる「種類の多さ」ではなく、「生き残るための多様な可能性」そのものであること。そして、それを支える湿地のような環境をいかに守っていくかが、私たちの未来を左右する鍵になるということを、改めて実感する機会となりました。

当日のスケジュール

2月8日(土)

15時開始

ご挨拶:損害保険ジャパン株式会社 札幌支店 髙橋 浩之氏

お話:表渓太氏

質疑応答

実施内容

■2/8(土) 15:00〜
湿地の生物多様性と希少種 
■guest speaker
表 渓太
1987年生まれ。
北海道大学理学部・理学院で、絶滅危惧種シマフクロウの遺伝的多様性を研究。
2015年より北海道博物館で動物担当の学芸員として勤務。2021年・2023年に特別展「あっちこっち湿地~自然と歴史をめぐる旅~」を企画。

参加者の声

  • 絶滅危惧種など人為的な選択が入ってるということにハッとさせられました。また、サハリンの湿地など、貴重なお話を聞けて良かったです。
  • サハリンの様子、シマフクロウなどの遺伝的多様性の話が印象に残りました。
  • 印象に残ったのは、シマフクロウの生息地において、種の交雑が出来ていないと知ったこと。今後の取り組みを期待しています。 良かった点は、ひとつひとつの用語を丁寧に説明いただき、わかりやすかったこと。今後も楽しみにしています。
  • オンライン開催と聞いていたのに、配信場所に一般参加者らしき方がいたのは何故でしょうか?
  • 配信会場のマイクの音質が悪く、とくに最後の質疑応答では質問者が何を言っているかまるで分らず、講師の方の回答を聞いて質問の内容がやっと理解できる有様でした。

イベント実施結果

参加者数
33名(大人32名、子ども1名)
アンケート回答数
11(大人11、子ども0)
実施してよかった点

表氏の貴重なお話やサハリンの写真を拝見することができたこと

実施して苦労した点

主催団体が久しぶりのオンライン配信だったため、イベント冒頭にマイクや映像の調整等で時間がかかったこと

特に寄付が活きたと感じた点

今回、講師謝礼やイベント準備に活用させていただき、無事にイベントを実施することができたこと。また、参加者からは、「初めて知ることが多くて興味深かった、もっと自然を大切にしたいと思った」等の声があり、学びのある充実した会にすることができたと実感しています。

主催・共催

主催:石狩川流域 湿地・水辺・海岸ネットワーク(しめっちネット)

共催:特定非営利活動法人 北海道NPOサポートセンター

協力・後援等

協力:特定非営利活動法人 日本NPOセンター

協賛
損害保険ジャパン株式会社